白昼夢中遊行症

断想

夜に眠れるようになったといっても、それだけで人生が良くなるわけではないし、もう二度と眠れない夜に出会うことがなくなるというわけでもない。最近ぼくは、考えないようにしている。何も考えず、ただ現前する物事にその通りの反応を返しているのみだ。考えこまなければ、眠れないなんてことはなくなるけれど、そんなに簡単に解決するならば、ぼくは大学を休学することはなかったはずだ。

考えるというが、ぼくは能動的に考えているわけではなく、何ものかに「考えさせられている」と言ってもいいかもしれない。ぼくは考え事をしたくて暗闇の中を過ごしているわけではない。何ものか、ぼくに余計なことを考えさせてくるのだ。直接的にはぼくの心の声が、実際にはこの世界が語りかけてくる。その声に耳を貸さないでいること。それが夜に眠ることにおいて肝要だ。

しかし耳を傾けなければ、ますますその声を大きくして、いずれ眠らせてくれなくなる。今までそんな繰り返しだったのだ。次もまた、そうなるだろう。今もそうだ、耳をすませば聞こえてくる。その言葉にならぬ声を、どうしても無視できないのだ。