白昼夢中遊行症

主題のない話

朝、というか午前11前に目を覚ます。ここさいきん、毎日これくらいの時間に、向かいの家に佐川急便が荷物を届けに来る。配達員が間を開けつつ何度か呼びかけて、だいたい三度目か四度目くらいに「はーい」という声とともに家の人がでてくるか、それでも応答がなければ配達員が諦めて帰って行く。

井戸端会議(井戸はない)が聞こえてくる。白内障の手術をするんだけど、90歳の母親をどうしようだとか、そもそも手術が不安だとか、そういう話。もう一人のおばあさんは、自分の手術の経験を話す。緑内障の手術と白内障の手術とをしたことがある、とか言っていた。目の手術は全身麻酔ではないので、感覚はないけど手術の様子が見える、とか、手術をするとなったら有無を言わせず麻酔ぶっさされてさっさと処置して終わってしまうから、そんなに恐くないよ、とかそんな話もしていた気がする。

13時くらいにいい加減起き出す。350g分の野菜がとれるらしい野菜ジュースを飲む。昨日までは起き抜けには牛乳を飲んでいたが切らしていた。そろそろ寒いので、飲むのがしんどい、というのもある。とはいえ、牛乳を飲まないとしたら、その分の金属やらタンパク質やらをどうにか別の手段で摂取できるように考えないといけない。だけど、それはなんか面倒だ。一日分の野菜、なんて言わずに、一日分の栄養を一度に摂取できるような完全食を安く手に入れることのできる時代に生まれたかった。何なら、ひと月、いや、一年分くらいの栄養を一気に取ってしまいたい。食事そのものが嫌いというわけではないが、食べ過ぎたり、食べなかったり、量が適切でも栄養が偏っていたりしたら正常に作動しないこの不便な人体を考えると、食べるものについて考えることはひたすらに面倒なことだ。ましてや自分の懐を考えると、いっそう憂鬱になる。いやまあ、棚に上げるべきではない事情として、おれは親の仕送りに依存して生きているわけだけど。でも、中途半端に親に依存しているこの状況がよくない、と考えることもできる。とはいえ、おれはおれの自己満足のためにおれの通う大学を卒業したいのであって、そして、いまのおれには親に依存することなしにそれを成し遂げることは不可能なので、大学を卒業するか、中退するかするまでは、おれはこの中途半端に親からの支援を引き出しながらの生活を続けなければいけない。

ケツから血が出る。食生活の乱れと、座ってPCとにらみ合って何時間も過ごす日々のおかげで、あんまりいい状態ではない。よい生活はよいクソから、というのはこの世の真理のひとつだが、少なくともいまのおれはこの意味においてはよい生活を送っていない。

コーヒーを飲む。インスタントの。いっときは煎った状態の豆を買って、コーヒーミルで挽いて、HARIOのドリッパーでドリップしていたが、続かなかった。思い出したころには豆はすっかり酸化していて、飲めたものではなかった。コーヒー豆のいいところは、たとえ飲めなくなったとしても、消臭剤や防虫剤として再利用する余地があることだが、そんなことせず捨ててしまった。もう二年くらい前の話だ。フィルターも2週間くらい前に捨てた。おれのようにゆとりのない人間にとっては、手軽であること以上の価値はない。どんなに香りや味がよくても、安価で手軽であることには負ける。そういえば、紅茶の茶葉なんかもあったっけ。これだって、ティーバッグのほうがずっといい。というか、紅茶に関してはものが悪いと粉っぽくて、粉っぽいと渋く出て、これまた飲めたものじゃない。淹れかたにも問題があるんだろうが、改善させようという気が起きない。ならばティーバッグで構わない。ティーバッグならば、雑に淹れてもそれほど味がぶれることはないし、後始末も楽だ。茶に関しては、手軽かつ安価、というわけにはいかず、ティーバッグのほうが高くつくが、まあよい。紅茶やらコーヒーやらは、冬には暖房代の代わりになる。暖房をつけることで電気代がどれくらい上がるのかは知らんが、たぶん紅茶を飲んでいた方が安くつくはずだ。

インスタントのコーヒーを飲みながら、少しだけ勉強をする。卒論は完全に行き詰まっている。そもそも、基本的なところが危ういので、そこから学び直しているところだが、こんなことをやっていると、時間がいくらあっても足りない。おれの取り組んでいる問題は、いくらでも時間をかけたいくらい興味深いが、提出期限を意識すると、浮き足だってよくない。もっとも避けるべきは、結論を急いで、また基礎から立て直しを強いられることだ。受験は答えだけ分かっていれば合格することができたが、卒論は、少なくともおれの分野は、答えが定まっていない問いに何らかの考察を与えることを目的としなければならない。したがって、その考察部分、すなわち答えを導出する論理の積み重ねが重視される。おれはいまだかつて、こうした気の長い作業を成し遂げたことがなく、今までも何度か失敗した。しかし、最後には見事勝利を収めて終わりたい。だからおれは何としても大学を卒業する、ということにこだわっている。

ところで、10月からビールが若干安くなったみたいで、ありがたい限りである。おれにとってビールは大事なビタミン源である。トップバリュの黄色いのの、異様に安いビールもそれほど悪い味ではなかった。あの値段で麦芽とホップ以外の原料を含んでおらず、味もまずくはないのだから、じつにありがたい。金に糸目をつけなければ、IPAがいちばん栄養的にも味的にもいちばん好み、ということになるが、安いに越したことはない。そんなことをいいながら、今日は冷蔵庫に残っていた、トップバリュの黄色いやつでもIPAでもない、クラフトビールを飲んだ。TOKYOクラフト・ペールエール。あんまりペールエールって感じじゃない気がするが、悪くはない。

なんだか止めどなくしゃべってしまい、この話の落とし所を見失ったが、よくよく考えれば、これはいつものことだから問題ない。おれは今日の勉強をほどほどに切り上げて、ビールを飲みながらこの日記を書きはじめた。そして、今日はもう満足するくらい話したし、ビールも飲み終えてしまったので、これくらいにしておく。