白昼夢中遊行症

バックプリントのパーカー

寒くなってきたのでそろそろ衣替えだなと思い、衣装ケースをチェックしていたら、革の手袋にびっしりとカビが生えていた。ここまできたらもう駄目だな、というくらいにまでなっていたので捨てた。同じ衣装ケースに入っていたもののうち、タオル類はそれほど値も張らないからということでごっそり捨てた。ストールや、もう一つあった革の手袋、ネックウォーマーは、カビが生えていないことを確認した上で、念のために天日干しにすることにした。といっても、夜中だが。しかし、明日にすると忘れているかもしれないので、今のうちにベランダに出しておいた。そうして中身をぜんぶ取り出した上で、衣装ケースはシャワールームに持っていって熱湯をかける。漂白剤とか使うのがいいんだろうが、まあこの方法でも十分効くはずだし、おれは、原始的な方法であればあるほど好ましい、と思っているたぐいの人間だ。

しかし、いままで衣類にカビが生えたことはなかった。たぶん今年の条件が悪かったのだろう。だとすれば、こりゃまずいなと思って他の冬物のアウターやら小物やらを一通り調べてみた。他の衣装ケースは大丈夫だったが、備え付けのワードローブがひどかった。開けるとかび臭く、湿気がこもっていた。そして、いくつかのアウターと、ベルトのほとんど、それとニットにカビが生えていた。ベルトは使わないので、カビが生えているものはすべて捨てた。一つは本当にひどい状態で、芝生みたいになっていた。そしてニット。ニットは裾に軽くカビが生えていた。ブラシでは簡単に落ちなかったので、ユニクロで買った安いやつ(合繊)は捨てた。しかし、ちょっと良いやつ(カシミアだったと思う)はもったいないので、明日クリーニングにもっていくことにした。その他の軽くカビが生えているものは、ブラシをかけて、同じく天日干しするために外に出した。カビは生えていないものの、かび臭くなっているものも、出せるだけ外に出した。この機会に要らない衣類はすべて捨てることにした。80リットルくらいになった。換気のためにワードローブを開けておいた。いま、部屋中がかび臭い。匂いだけでもごまかそうと、インセンスを焚く。GONESHの8番。一番人気で一番普通なやつ(たぶん)。ちなみにおれは7番が好きだ。番号シリーズのうち唯一の奇数。GONESHは品質が安定しているので、感情に斑があるおれにとってはありがたい。ノーブランドっぽいやつは、たまに花火かな? というくらいにめちゃくちゃに煙が出たり、かび臭かったりする。

しかし、ここまでかび臭いと、たぶんワードローブ自体にもカビが生えているかもしれない。ワードローブとはいうけれど、実際には物置みたいなものだ。一回で炊かなくなったマイコン炊飯ジャー、日本酒のベネチアンな空き瓶、もう行かないであろう釣りの道具いろいろ、もう振らないであろうテニスラケット何本か、箱いっぱいの本、本、本……、iMac付属のapple wireless keyboardとmagic mouseの空き箱、友人と金を出し合うという話で、しかしひとまずおれが全額立て替えてた、クラウドファンディングで購入した日本酒の入っていた箱——その後、その友人とは連絡が途絶えてしまい、日本酒は冷蔵庫のスペースをいつまでも占有している——、PS4 proの入っていた箱は先日売り払うことでなくなったが、超音波洗浄機の入っていた箱はまだある。PS4は暖房器具として冬場は活躍してくれていたが、高負荷のゲームを長時間プレイしないと暖まらないのが難点だった。ソフマップに持っていったら減額なしの2万4000円になった。昨日はそのことを日記に書こうとしていたが、言葉があふれて書けなかった。

と、PS4の話ではなくて、ワードローブみたいな物置の話だったっけ。まあ、そんな感じにいろいろとものを詰めこんでいたので、いったんそれらを取り出してみないことには、全容を確認できない。とはいえ、不要なものを捨てるいい機会でもある。というか、今日すでに、不要な服をごっそり捨てることができた。部で学園祭のときに作ったバックプリントのパーカー(2年ぶん2着)も捨てた。学園祭、今年はどうなるんだろう。おれには関係ないことだが。服については、最終的には切り詰めに切り詰めて、白シャツとデニムと、アウターをいくつかだけにしたいところだが、まだそこまではできていない。しかし、それでもだいぶすっきりしたと思う。いや、まだ生ぬるいか? でも、まあこんなものだろう。一番ごちゃごちゃしていたときと比べれば、だいぶ減ったと思う。他方、全体を占める白シャツの割合は増えている。いろいろと捨てる一方で、白シャツだけは毎シーズン何かしら買っている。なんだかんだで買っている。白シャツは見てよし、着てよし、の素晴らしい衣服だと思う。

で、なんの話だっけ。とりあえず、ちゃんと服は定期的に点検しないといけないな、という教訓を得た。あと、ワードローブに吊っているアウターは、隙間を空けて風通しをよくしておくべきだろう。そのために点数を絞っておくことも。散々な衣替えだった。しかし、すがすがしくもあった。普段のおれはなんだかんだと理由をつけて、現状維持に甘んじていた。けれどこうして、いらないものをはっきりといらないものとして捨てるという行動につなげることができた。そのおかげで、また一つ(一つではない)持ち物が減った。それといっしょに余計な思い出も。背負う荷物は軽いに越したことはない。