白昼夢中遊行症

天気予報は当てにならない

今日は昨日くらいの気温だと聞いていたので一枚多く羽織っていたのだが、天気予報は当てにならないな。天気予報をあてにした観光会社の社長は、その判断によって十数人、もしかすると廿数人を殺した。この疫病禍の下で旅行に行くという判断が、しかも安物のプランを選ぶ判断が、自分の命を殺した。安物買いの銭失い、どころではない。命がなくては金なんて何の役にも立たない。地獄の沙汰も金次第、とは言うが、あれは嘘だ。生きていなければぜんぶ嘘だ。山や海に行くのであれば、金はいくら積んでも積みすぎということはない。おれは山登りをしていた時期が少しだけあったが、靴には金をかけたほうがいい、という言葉を信じて、結構な値段のものを購入した。結局、そんなに使ってはいないが、山で足を怪我すると死んでもおかしくない。だからこの判断を間違ったとは思わない。しかし、今日一枚多く羽織っていったのは間違いだった。今日は目が覚めた時からとても気が重く、しかし重いからといってどうということもない。おれは心身ともに健康なので、気の重さが体の重さとなって現れるということはない。とはいえここ数日毎日毎日歩き回ったせいか、両肩と両足が重い。しかし、重いというのは筋肉の疲労からくる錯覚に過ぎない。しかるべく力を入れれば、そのように動く。起き上がってシャツを着る。今日の体温は36.1度。起床時間は8時10分で睡眠時間は7時間6分。ベストではないが気分良く生きるための最低限の睡眠はとれている。そうだ、おれは気分よく生きたいだけだ。牛乳をマグカップに二杯飲んで家を出る。駅のファミリーマートで水とリポビタンDを買う。買った水は「津南の天然水」。ラベルの真ん中に商品名がゴシック体でデンと書かれている。それがなんだか気に入らない、といったのは誰だったか。おれは、おれの言ったことには何から何まで逆らわなければならない。昼食はローソンで買った半額のサンドイッチと、カロリーメイト的なものと野菜ジュース的なもの。セブンイレブンルイボスティーを買って午後の仕事に戻る。午後の仕事が終わると、まっすぐ家に帰る。帰る、という響きに、今日もなんだか違和感を覚える。しかし、帰る以外にいい言葉が見つからない。おれはきょうはまっすぐに〈自分の寝床のある建物のひと部屋〉へ行く。まっすぐに、といったが、〈自分の寝床のある建物のひと部屋〉に近い駅に着いたあと、荷物を受け取りにコンビニに寄った。Amazonのセールで買った、Ankerの「Soundcore Liberty 3 Pro」。金はないが、必要だと感じたので買った。必要なものに、金を惜しんではいけない。でなければ、死んでしまうかもしれないのだ。命がなければ金は何の役にも立たない。地獄の沙汰も金次第、とは言うが、そんな言葉は信じない。金を持っている悪人が、金を持っているがゆえに地獄で優遇されるなんてことを認めるわけにはいかない。死んでからも格差がある、なんてことを認めるわけにはいかない。そんな恐ろしい世界を、認めるわけにはいかない。地獄の沙汰も金次第、なんて言葉は嘘だ。金持ちの悪人はこんなことを言うおれを笑うか。しかし、少しでも良心が残っているのなら、せめてそれを信じさせてくれ。