白昼夢中遊行症

面影のひと

外出帰り、最寄り駅前のコンビニに立ち寄ると、おれが中学生だった頃の同級生らしい人がレジをやっていた。そうだ、ここはおれの地元でもある。昔なんらかの関係性を持っていた人の、ひとりやふたり、出会してもおかしくはない。

といっても、おれの交友関係は昔から狭かったので、それも稀なことである。実際、いまのいままで、知っている面影を一瞥だにしなかったうえ、そんなことがありうるとも思っていなかった。

とはいえ、彼が本当にその同級生であったのか、確かではない。というのも、おれはその隣のレジの方へ流れていったからだ。だから、彼の名札を確かめることはできなかった。

しかし、彼がその同級生だったかもしれないと考える理由はある。なぜなら、彼が実際にそのコンビニで働いていた時期があることを知っているからである。彼は中学を出てからそこのコンビニで働きだした。おれが大学1年の頃に帰省した折にも、そこで働いていたのを知っている。その時もひと言ふた言、挨拶を交わしたのだった。

しかしそれから5年の月日が経ったのだ。もし彼が彼だとして、だからどうというのか。いまとなってはもう、なんの関係もない。なんら関係を築く由もない。

ただおれは、彼と、彼がおれの人生の中にあったひと頃とを懐かしみ、そしてひっそりと彼の幸せを祈るのみである。