白昼夢中遊行症

いまはまだ、そこにいるのだが

わたしを悲しくさせるのは、わたしという人間の薄情さ、とでもいうのだろうか。

いまの環境を離れて、いまの人たちと別れても、寂しいと思うのはせいぜい長くて1年、いや半年くらいのもので、時間が経ってしまえばそんな寂しさはどこかへ行ってしまう。

いくら、いまの人たちを愛し、大切に友情を育んだところで、状況が変われば程なくして他人となる。そんな経験はもう、この短い人生でも、何度となくしてきた。別れた人たちのことを、たまに思い出し、懐かしむことはあれど、焦がれることはない。それくらいのものだ。

わたしは、そんな人生のそっけなさが悲しくて、それでも涙の一滴も零れぬことが、たまらなく寂しい。

されど人生は過ぎる。見えなくなった人たちに目を凝らす。いずれ見えなくなる人たちの、影に手を伸ばす。今はまだそこにいる人たちに、わたしはどうするのがよいのかわからず、おろおろする。そして年月と人々が過ぎ、かつてあったものだけがわたしのものとなる。