白昼夢中遊行症

断想

駅地下の非常階段に腰を落ち着けて、缶チューハイを飲む。電車に乗って帰って行く人たちの声を遠くに聴きながら、この世界に馴染まないのは彼らか、それともぼくの方かなどということを考えていた。

ときおりぼくのいるところを通って、階段を登る人たちは、ぼくのことを視界に入れないようにして通り過ぎていく。その様子を見れば、彼らにとってぼくは異端の存在であり、ぼくよりも彼らの方が多数派なのであるから、この世界に馴染まないのはぼくの方だということになるだろう。

ぼくはこの世界に馴染まないとして、ぼくはそれに対してどうありたいと望むのかといえば、一方でこの世界にふさわしい存在でありたいと思い、もう一方では、異端であることを望む。

ぼくは態度をはっきりさせずに生きていて、それがこの世界にとって一番馴染まない。つねに可能的存在であり、実存には至らない。ぼくはこの世界に生きていない。この世界に対して開かれていない。

……

 

花粉症がまた発症した。毎年、ヒノキの花粉は目に症状が現れる。今年は平気だと思っていたのだが、マスクをつけないで外出を続けていたら閾値を超えたようだ。

そういえば最近、ルイボスティーを飲んでいない。暖かくなってきたのと、湯を沸かすのもままならない倦怠のせいだ。

倦怠といえば最近、髪がさすがに切らないといけないくらいに伸びているのだが、面倒で切りに行けない。まず、電話をかけるのが面倒だし、予定ができるのも嫌だ。もちろん、椅子に座って大人しく髪を切られているというのも面倒だ。かといって、自分で切るのも面倒で、そもそも髪を切るハサミを持っていない。

この文章はいつも惰性で書いていて、湯を沸かしたり、美容室に電話するよりは心理的なつっかえがなく、少々面倒だと思いながらも何か書くことができている。というか、何事も面倒だと思っている時にこそ、どうしてか何か文章を書く気になるのだ。今日もそうやってだれの得にもならないつまらない考えごとを言葉にして、文字にしているのだ。