白昼夢中遊行症

日記

寒い。目を覚ますと寒い。温度計をみるといつもよりも気温が4度低い。ストールにくるまって、かじかむ手でこなす朝のルーティン。

松屋で朝食。塩辛い豚汁には紅ショウガが合う。

スターバックスアールグレイハニーホイップティーラテを頼む。「もう年末ですね」と店員。そのとき私はどう応じたか、覚えていない。アールグレイの柑橘系の香りとハチミツとの相性はとてもよい。ハチミツとレモンの相性がいいのと同じだ。やろうとすれば家でも作れそうなので、もしかしたら作るかもしれない。

持ってきた本。ツルゲーネフの『父と子』。昨日、古本屋で購入した、旺文社文庫特装版。ハードカバーで、注釈を後注ではなく脚注にしているなど、古い本にも関わらず、読みやすさにかなり気を遣った造りになっている。巻末には解説なども充実している。惜しいことに、旺文社文庫はすでに廃刊になっている。こういう文庫本をどこか他でつくってくれないだろうか、と思うが、おそらく採算がとれないのだろう。

ロシア文学は人名が覚えにくいために、敬遠されがちだ。私の高校時代の国語教師もそうだった。その人曰く、定期的にドストエフスキー罪と罰』を読もうとするのだが、いつまで経っても老婆が死なないという。おれもおれで、『カラマーゾフの兄弟』を昨年読み始めたが、まだ人が死んでない。

『父と子』を30ページほど読んだ。

店を出て、散歩する。遊歩道を歩く。ちょっと大きめの公園を歩く。いままで歩いたことのないところを歩く。「緑と記憶の通り庭」、「青空の教室」、「映しの庭」、「丘の上のテラス」。空が広い。川の流れのようにゆるやかでリズミカルに蛇行する道。そこを通り抜けると、もとの町並み。家に向かって舵を切る。大都会のステーキ。「SNAP」。高架下の列柱。車を殺す用水路。

私が休学していたとき、何かと気にかけてくれたベトナム人の友人と行った中華料理の店は、いつの間にか潰れていた。今年の五月に燃えた家の跡地は駐車場になっていた。

人類みんな兄弟なんだとすれば、新年ごときで祝っている場合じゃねえよな。みんな喪に服していなければならない。いずれ人類がひとり残らず死に絶えて、これ以上死ぬべき人間がいなくなるまでは。

今日も川は流れている。

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