白昼夢中遊行症

断想

わたしは聖人などであるべきではなかった。

たとえどんなに相手が憎かろうと、そいつが弱っているときにそれに追い打ちをかけるようなことをしてはいけない。そんな考えで、そいつには思っていることを言わなかった。むしろ、逆のことを言った。それがまずかった。おかげでわたしは今ではそいつ以下の小物に成り下がってしまった。そいつはわたしに感謝していることだろう。わたしはあのとき、とどめを刺すべきだったのだ。そうすればわたしの眼前から憎むべき人間の姿がひとり減ったというのに。しかし、そのようなことを言っても何も状況は変わらない。今や、わたしがそこでの憎しみを集める人間だ。姿を消すべきなのはわたしということだ。

わたしは、いずれそこから去る。

わたしが憎む人間が、わたしの眼前から消える。

わたしを憎む人間が、わたしの眼前から消える。

これで万事うまくいく。