白昼夢中遊行症

断想

どこか遠くへ行きたい。

という気持ちはあっても、どこか行きたい先があるわけではないし、なんなら、どこへも行きたくない。動きたくない。そんな面倒なことはしたくない。どこか遠くへ行きたいのではなくて、ここにいたくない。どこにもいたくないのだ。

おれはこの世に生まれてから、いかなる場所にも居心地のよさというものを感じたことがない。ここが自分のいるべき場所だと、

……

 

なんだか何も書けなくなっている。変換学習との息の合わなさがおれをいちいちいらだたせてくれる。

読みたい本を読めないでいる。そもそも読みたい本はどうして読みたい本なのだろうか。

ほんとうに、どうしても文章が書けない。いつもは饒舌なおれの頭の中の声が、今はすっかりなりを潜めている。ごく短い文でさえも書くことができない。言葉遣いもいつもにましてぎこちない。

昼夜逆転しつつある。しかしこれはいつものことだ。

日記に残っていない日々は存在しない。日記を書けないような期間も、日記を書くための言葉を使えないでいる期間も、存在しないに等しいだろう。

何も言葉が出てこない、という言葉しか出てこない。しかも、この言葉さえも、数分の熟考の後にようやくひねり出した苦し紛れの言葉だ。

変換学習と、おれの変換したい文字とがかみ合わない。こんな些末なことにいちいちいらだってしまう。

遠くへ行きたくなってきた。そうだな、たしかにその通りだ。どこか、どこでもない場所へ行きたい。時間的にも空間的にも位置を占めないでいたい。そういうところへ行きたい。

こんな言葉にもならない言葉を書いていたって時間の無駄だ。今日こそ、夜が明ける前に眠りたい。しかし、言葉にできないいらだちばかりが募っていく。こんなもどかしさは久しぶりのような気がする。

漢字に変換したいところがひらがなだったり、ひらがなにしたいところが漢字になっていたりする。というか、適切なところで言葉を切ってくれない。

どうせ寝られないが、眠るまねごとをした方が、こうして言葉が出てこないいらだちを募らせていくよりもましだろう。