白昼夢中遊行症

ハンズで買ったビールグラス

昨日は眠る時間が若干遅かったので、今朝は少し遅い時間に起きた。朝のルーティンを終わらせたあと、朝食を食べにいつもの松屋に行ったが、休みだった。そういえば、昨日もそれで家に引き返したんだっけか。とはいえ、店に張り出されている貼り紙を見る限り、もう営業しているはずなんだが。まあいい。コンビニでおにぎりとベーコンとチーズを買って帰る。

家に帰ると、手洗いうがいをして、狭い調理スペースで朝飯を作る。狭いところでも、慣れればそれほど不便は感じない。凝ったものは作れないが、何もできないわけではない。しかし、今日は注意力が鈍っていたのか、誤ってシンクの上の収納スペースに置いてあった菜箸を取る際に、そこにあったグラスに手をぶつけてしまう。ハンズで買った、ビールグラス。チューリップ型がちょっと太ったような形のグラス。それはシンクに落下して、ガシャンと音をたてて割れた。

自分が所有しているガラスの器のうちではいちばん薄いものだったので、けっこう重宝していたのだが、割れてしまったものは仕方ない。(とはいえ一般的にはそこまで薄くない。)落下するところに手を伸ばせば間に合う見込みはあったが、落ちていく割れものに手を伸ばすのは危険だと判断して、そうしなかった。おれはなかば、自分から落ちていくグラスを見捨てたみたいなものだ。でも、それも仕方ないことだと思う。以前、おれのかつてのバイト先で、ドリンクを担当していた人が落ちていくグラスを見捨てずに、結果として手をパックリと切ってしまい、その日たまたま来ていた本部の社員の人の車で病院へ運ばれていった。グラスは割れた。

そんなことがあったので、おれは落下するグラスを見る、というタイプの出来事を目の当たりにしたときには、そのまま見過ごすことを最適な行動としてショートカットに登録していたのだ。実際、手を伸ばしたとしても間に合う可能性はそんなに高くなかったし、助け損ねて手を深く切ったときに行くべき病院を知らなければ、治療費を払う金もなかった。この時期に医者がやっているのかどうかも知らなかった。

おれは人生で病院に行ったことがほとんどない(というか、町医者には行ったことはあるが、病院に行ったことは一度もない)。特に、外科に行ったのはガラスを割って小指の第一関節の肉が吹き飛んだ時くらいだ。ここで思い出したが、そういえばそんなこともあったな。おれは実際に割れたガラスでちょっとした怪我をしたこともあったので、ガラス製品を恐れていたのだ。だから、落ちていくグラスに対して、おれはむしろ距離をとった。

割れたグラスのかけらを拾う際にもびくびくしていた。大きい破片から順に拾って東急ハンズの紙袋に回収する。慎重に、一枚ずつ。特に気をつけるべきなのは、砂粒くらいの小さいかけらだ。そんなものでも、しっかりと人間の皮膚を切り裂くくらいの鋭さはある。むしろ、細かいやつは傷口に入り込むと厄介だ。なんとかすべて回収する。回収し終えたら手を洗って、手に引っ付いているかもしれない細かいガラス片を洗い流す。これで一件落着だ。

代わりのグラスは……まあ買わなくていいだろう。マグカップさえあれば充分だ。いま使っているマグカップは素焼きのものなので、炭酸飲料を入れると泡立つ。これをいいと言う人もいるが、おれはこれを好まないので、ビールを入れて飲むのには適さない。でもまあ、この季節は体が冷えるのでビールを飲むこともないだろう1

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  1. 追記: こう言ったあと、おれは2、3日もしないでビールを飲むことになるのだが、それはまた別のお話。