白昼夢中遊行症

断想

(2023/10/05)

今日は雲を見なかった。
屋根のあるところにいる時間が長くなった人類は、雲から季節を読み取ることがなくなった。
おれも、季節の雲を知らない。
秋の雲はどんな形をしているのだろう。
どのように流れてゆくのだろうか。

最後に、雲をまともに見たのはいつだろうか。
昔はぼーっと眺めていたこともあったような気がするのだが。
何が変わったのだろうか。昔も、屋根があるところで暮らしていたのだが。
雲の形に意味を与えなくなってどれくらい経つだろうか。
いつから、世界はわたしに何も語らなくなったのだろうか。それとも、わたしが世界から遠ざかってしまったのだろうか。それはいつから?

明日はちゃんと、雲を見てみよう。その形から、世界が語る内緒のはなしを、いつか素晴らしい物語に仕立ててみんなに語って聞かせよう。聞こえない人が仲間はずれにならないように、ちゃんと文字にもしてさ。
そんな仕事をしてみたかった。

それだけが、心残り。