白昼夢中遊行症

あったこと

夢の中でも仕事をしていたのだが、そこでのおれの立ち回りは、拙いものだと傍目でわかるようなものだった。

というメモが残っていた。
けさ見ていた夢についてのものだ。
おれはどうやら、夢を見ていたようだ。
仕事をする夢を。
それも、まずいやり方で仕事をする夢を。

あんまり覚えてはいないけど、なんというかあんまり適切な仕方で人に言葉をかけられていなかったような気がする。
おれはコミュニケーションが得意な人間ではないが、かといって軽視しているわけでもない。ともに仕事をする人間は敵ではないので、なるべく気持ちよく仕事がしたい。なので、気をつけるようにしているのだが、夢の中のおれは、そこをうまくできていなかった。という印象だけ残っている。
具体的な内容は何ひとつ覚えていないけれど。


お昼

いつもお昼は会社の入っている建物を出て、コンビニで買い物をした後、外で食べるようにしている。夏は暑く冬は寒いが、外の空気と自然光に触れることがおれを保っているのだと考えているので、まったく不満はない。だが、何かあったときにちょっと困るかも、とは思っていた。

今日、実際にちょっと困ったことがあった。昼にカップ麺を買ったのだが、箸をもらえていなかったということに、店を出て移動して、いざ食べようというときに気がついた。素手カップ麺を食べることは非常に難しい。どう頑張っても火傷してしまう。スープだけ飲むか? そのときに精一杯吸引して、麺を吸い上げるか? 困った。

困ったが、幸いなことに、おれは欲張ってホットスナックの串物をひとつ購入していた。もし二つだったら、それを箸代わりにできただろう。しかし串一本であれ、ないよりは断然いい。

串で麺をすくってみる。うまいこと、麺が持ち上がる。それを唇で軽く挟み、啜り上げる。なんだ、いつもと大差ないな。麺を啜るという食べ方は、器から口内へ食物を運ぶときに、箸やスプーンなどの食器を用いる度合いが小さいのか。だから、そんなに気にならないのか。なるほど。それに、麺というものの形状も幸いした。これは掴む必要がなく、重心を見極めそのあたりで引っ掛けて持ち上げれば、口まで運ぶことができる。一部を口に運べば、こちらのものだ。あとは吸い込めばよい。そしてスープは単に、水を飲むのと同じように、器に口をつけた状態で、適量が口内に流れ込むように、器を傾けるだけだ。これはいつもと変わりない。

そんなこんなで、わりあい簡単に食べ切ることができた。ここでむしろカップ麺ではなく弁当などであったらもう少し苦戦していたかもしれない。どうやって炊いた米を一本の棒で食べればよいのか、いまのところ見当がつかない。手で食べるのは容易なことだが、手に油や澱粉が付着すると、仕事に差し支える。

箸をもらい損ねた不幸を嘆く代わりに、今日の昼食にカップ麺を選んだこと、そして欲を張ってフランクフルトも買ったこと、それによって窮地を乗り越えることができたということの幸運を祝福しよう。今日はいい日でした。